製造業においてWEBマーケティングは、もはや欠かせない要素となっています。従来の営業手法に加え、デジタルの力を活用することで、新たなビジネスチャンスを獲得し、効率的な顧客獲得が可能です。本記事では、製造業がWEBマーケティングを導入するための7ステップをご紹介します。
◆目次
Toggle製造業にWEBマーケティングが必要な理由
理由1. 購買担当者の情報収集源はWEBサイトへ
BtoB取引における購買プロセスは、近年大きく変化しています。
特に、購買担当者が情報収集を行う場として、WEBサイトの利用が主流となっています。従来のように展示会や直接的な営業だけに頼るのではなく、オンライン上での情報提供が非常に重要視される時代となりました。
実際のデータでも変化が顕著です。
例えば、トライベック・ブランド戦略研究所の調査(2021年)によれば、購買担当者の66%以上が製品やサービスの情報をWEBサイトで調査しています。これにより、買い手側が主導権を持つ「買い手主導型」の営業プロセスへと移行していると言えます。
このような背景から、製造業の企業も競合他社との差別化を図るために、質の高いWEBコンテンツの整備が欠かせません。もちろん営業担当者(人)からの説明が不要になったというわけではないため、オンラインとオフライン両輪での対応が求められると言えます。
*出典: Total number of Website
*出典: トライベック・ブランド戦略研究所 / BtoBサイト調査 2021
理由2. WEBを起点とした情報提供による顧客育成活動が必要に
近年、WEBコンテンツの増加、多様化からオンラインで詳細な製品情報や事例、ホワイトペーパーなどのコンテンツを閲覧できるため、購買担当者は営業担当と接触する前にすでに大部分の情報収集を完了しているケースも多いです。
The Digital Evolution in B2B Marketingの調査によれば、BtoBビジネスにおいて買い手は購入前の情報収集プロセスの57%を営業担当の接触前に済ませているとも言われています。
つまり、買い手が自ら情報を収集し、比較検討を行う段階で、WEBコンテンツが「営業担当」の役割を果たしているのです。
今後の製造業においては、WEBサイトが営業の代わりとなる役割を果たす仕組みを作ることが成功の鍵となります。
*出典:The Digital Evolution in B2B Marketing
製造業がまず取り組むならWEBマーケティング領域
直接的な数字(引合い)に繋げやすい
製造業がWEBマーケティングを導入する際、最初に取り組むべき理由の一つが、短期的に目に見える成果(引合い)を得られる可能性が高いからです。
例えば、リスティング広告(検索連動型広告)は、明確な商材を探している購買担当者を直接ターゲットにすることができます。特に、「製造業向け○○機械」「金属加工機械 比較」など、顕在的なニーズを持つキーワードを狙うことで、効率的に見込み顧客を獲得可能です。
また、検索エンジンで上位に表示されるためのSEO対策も、費用対効果の高い集客手段として注目されています。ニッチなキーワード(例:「高精度プレス加工 機械」「○○対応の省エネ設備」など)で上位を獲得することで、競争の少ない市場で確実なリードを得ることが可能です。
今後のマーケティング活動の基盤になる
WEBマーケティングへの投資は、単なる短期的な成果にとどまらず、中長期的なマーケティング活動の基盤を構築する点でも重要です。
製造業における営業活動は、一度の取引で終わるのではなく、長期的な関係を構築することが求められます。そのため、継続的に顧客と接点を持ち、信頼を深める仕組みが必要です。
その基盤を支えるのが、顧客リストの管理やデータに基づいたマーケティング施策です。
顧客データベースの構築
WEBサイト経由で取得したリードをMA(マーケティングオートメーション)ツールで管理し、休眠顧客の再アプローチにも活用。
WEBコンテンツ資産の蓄積
ブログ記事や事例紹介、ホワイトペーパーなどのコンテンツを蓄積することで、将来的にSEO効果が強化され、新規顧客の獲得を安定化。
特に、MAツールを活用することで、問い合わせ履歴や閲覧履歴をもとにしたターゲティング施策が可能となり、営業活動の精度を向上させることができます。こうした基盤を構築しておけば、景気や市場の変動にも柔軟に対応できる、強固な営業・マーケティング体制が作れます。
上記については次章にて詳しく解説しています。
顧客リストやコンテンツが少なくても始められる
「WEBマーケティングは大企業向けで、リソースが限られる自社では難しいのでは?」と思われる方も少なくありません。
しかし、実際には、少ない顧客リストやコンテンツ量でも始められる施策が多くあります。
例えば、リスティング広告では、ターゲット層が明確なキーワードを選定することで、初期費用を抑えつつ成果を上げることが可能です。CPC(クリック単価)が比較的低いニッチなキーワードを狙えば、予算が限られている企業でも効率的に広告を運用できます。
また、メールマーケティングは、少数の顧客リストを活用して施策を展開できる手法です。例えば、既存の顧客リストに対して月1回のメルマガを配信するだけでも、休眠顧客の再アプローチや新製品の告知に役立ちます。
さらに、ブログやSNS運用は、初期費用がほとんどかからない上、継続的に情報を発信することで信頼感を醸成できます。特に、製造業が得意とする技術的な内容や事例紹介などを活用することで、競合との差別化を図ることができます。
このように、リソースが限られていても、適切な施策を選べばWEBマーケティングを十分に活用することが可能です。まずは小さな一歩から始めてみましょう。
製造業がWEBマーケティングを導入するための7ステップ
1. マーケティング活動の全体像(計画)を描く
WEBマーケティングを成功させるためには、まず全体の計画を明確に描くことが重要です。特にこの3つのポイントを押さえる必要があります。
- 目的の明確化:リード獲得、新規顧客開拓、既存顧客との関係強化など、最終的に達成したいゴールを具体化します。
- 現状の把握:既存の営業活動やマーケティング施策、WEBサイトの状態を把握し、改善すべき点を洗い出します。
- KPIの設定:たとえば、「月間〇件の問い合わせ獲得」や「アクセス数を〇%増加」など、具体的な数値目標を設定します。
計画の段階で重要なのは、短期的な成果だけでなく、中長期的な視点を持つことです。特に製造業では、営業プロセスが長期にわたるケースが多いため、1年後や2年後を見据えた計画が成功の鍵となります。
これからWEBマーケティングを開始する場合は、欲しい受注数から逆算して必要なアクセス数の目標を立てるのがおすすめです。
2. ターゲットを明確にする
マーケティング活動を効果的に進めるには、あらかじめターゲットを明確に設定することが必要不可欠です。
これには、ペルソナ(理想的な顧客像)の設定が役立ちます。ペルソナを設定する際には、以下の項目を詳細に考えると効果的です。
- 業界(例:製造業、卸売業など)
- 業種(例:自動車部品メーカー、食品機械メーカーなど)
- 役職(例:購買担当者、エンジニア、経営者など)
- 抱えている課題(例:製造効率の改善、コスト削減、新規設備導入など)
また、ペルソナを具体的にするためには、既存の顧客データを活用すると良いでしょう。たとえば、過去の顧客リストを分析し、「どの業種や規模の企業が最も収益性が高いか」を確認します。この作業を行うことで、狙うべきターゲット像がはっきりします。
ペルソナが決まることで、どんなコンテンツが求められるのか?どんな情報が喜ばれるのかを考えやすくなります。
これからマーケティング活動を始めるケースであれば、まずはターゲットの輪郭を掴む程度でもOKです。
3. 会社ホームページを見直す
製造業のホームページは、単なる企業情報の発信だけでなく、見込み顧客を引き寄せ、信頼を構築するための重要な営業ツールです。
特に購買担当者やエンジニアが情報収集の第一歩としてホームページを訪れるため、「専門性」と「分かりやすさ」を兼ね備えた設計が必要不可欠です。
製造業のホームページを見直す際に重視すべき具体的なポイントを以下にまとめました。
製品情報を詳細かつ分かりやすく整理する
製造業のホームページでは、製品情報の充実度が信頼性を左右します。閲覧者は、具体的なスペックや使用用途、導入メリットなどの詳細情報を求めているため、以下のような工夫が重要です。
- 製品ページの構成例:
- 製品写真(できれば使用シーンを含む写真)
- 製品の仕様・スペック(PDFで詳細資料をダウンロード可能に)
- 利用事例(業界や用途ごとに具体的な成功事例を紹介)
- 他社製品との比較ポイント(競争優位性を明確に)
ポイント:「詳細さ」と「見やすさ」のバランスを保つことが重要です。閲覧者は短時間で必要な情報を探そうとするため、箇条書きや表を活用して要点を分かりやすく伝えると効果的です。
信頼感を高める「事例」や「導入実績」を掲載する
製造業では、具体的な事例や実績が信頼感を得るための鍵となります。特に、過去の導入事例を掲載することで、以下のような効果が期待できます。
- 「他社も利用している」という安心感を提供
- 閲覧者が自社の状況に当てはめてイメージしやすくなる
- 導入効果(コスト削減、生産性向上など)を具体的に伝える
実例:
- 導入企業のロゴ一覧を掲載する(業種ごとに分類するとさらに良い)
- 「導入前の課題」と「導入後の成果」を明確に記載する
- 導入後の成功ストーリーをインタビュー形式で紹介する
このような事例コンテンツを充実させることで、競合との差別化を図り、購買担当者の信頼を獲得できます。
問い合わせの導線を簡潔で目立たせる
多くの製造業のホームページでは、「お問い合わせフォーム」がわかりにくい位置に配置されていることが課題です。しかし、WEBマーケティングの最終的な目的は「問い合わせを増やす」ことです。以下の改善ポイントを参考に、問い合わせへの導線を最適化しましょう。
- 目立つボタン設置:ヘッダーやサイドバー、製品ページの末尾に目立つボタンを配置(例:「無料で資料請求」「お問い合わせはこちら」)。
- 問い合わせフォームの簡素化:入力項目を最低限に絞り、手間を減らす(例:名前、会社名、メールアドレス、簡単な問い合わせ内容のみ)。
- CTA(Call to Action)の工夫:例えば、「〇〇業界で実績多数!無料相談受付中」といったメッセージで具体的な価値を伝えます。
また、フォームのほかに「チャット機能」を導入することも検討できます。チャットならリアルタイムで回答を得られるため、購買担当者のスムーズな意思決定を後押しします。
技術資料やホワイトペーパーを提供する
製造業のホームページでは、専門性をアピールするための技術資料やホワイトペーパーの提供が効果的です。購買担当者やエンジニアにとって、詳細な技術情報は大きな魅力となります。
技術資料の例:
- 新製品の仕様書
- 生産効率を向上させるためのチェックリスト
- 技術トレンドや市場動向に関する解説レポート
これらの資料をPDF形式でダウンロード可能にし、ダウンロード時にメールアドレスを登録してもらうことで、見込み顧客のリストを構築できます。この施策は、単なる集客ではなく、リード獲得にもつながるため、一石二鳥です。
モバイルフレンドリーなデザインを採用する
購買担当者や技術者が移動中や現場でスマートフォンを使用して情報収集を行うケースが増えています。そのため、モバイル端末で閲覧した際もストレスなく情報にアクセスできるよう、**モバイルフレンドリーなデザイン(レスポンシブデザイン)**を採用することが重要です。
特に以下の点に注意しましょう:
- ページの読み込み速度を高速化する(3秒以内が理想)。
- ボタンやリンクを指で押しやすい大きさにする。
- スクロールなしで重要な情報が見えるレイアウトを意識する。
Googleの「モバイルフレンドリーテストツール」などを活用し、自社サイトがモバイル対応しているか定期的に確認すると良いでしょう。
4. 集客手段を決める
ホームページを開設してもいきなり見込み客が集まるということは稀です。そのため、見込み客をどのように自社ホームページに集客するかを検討する必要があります。
BtoBビジネスにおけるWEB集客としては、主にSEO対策、リスティング広告を自社のリソースや目標に応じて最適な方法を選びます。
- SEO対策
これからWEBマーケティングに取り組むのであれば、ニッチで顕在的なキーワードを狙うことで効果を発揮します。
たとえば、「高精度加工機械」「省エネ対応の○○装置」などの特定分野に特化したキーワードで上位を目指すと、質の高いリードを効率的に獲得できます。 - リスティング広告
とにかく即効性を重視したい場合は、リスティング広告が有効です。
CPC(クリック単価)の安いキーワードを見つけ、小額から運用を開始すれば、短期間で成果を上げることが可能です。
つまり、じっくり取り組むならSEO、即効性を求めるならリスティング広告ですが、どちらを選ぶにせよ、継続的な運用と効果測定が重要です。
特に製造業では、一度の接触ではなく複数回の接触が購買につながるケースが多いため、長期的な視点を持ちましょう。
5. 集客のターゲット層を広げる施策を検討
製造業のWEBマーケティングでは、最初は顕在顧客(具体的なニーズを持つ人)を狙うことが多いですが、次の段階として潜在顧客をターゲットにする施策が求められます。
潜在顧客とは、「まだ具体的な課題を認識していない」「解決策を探し始めたばかり」の層を指します。
潜在顧客をターゲットにする具体的な方法
- 業界ブログで課題を提起する
製造業に特化したブログ記事を運用し、「見込み顧客が抱える課題」と「解決のヒント」を提供します。例えば:- 「精密加工を効率化するための5つのステップ」
- 「金属加工におけるエネルギーコストを削減する方法」 こうした内容を発信することで、ターゲット層の関心を引き付けることができます。
- 潜在ニーズを引き出すコンテンツ
ホワイトペーパーやガイドブックを用意し、「メールアドレス登録でダウンロード可能」とする仕組みを作ります。たとえば:- 「省エネ機械の選び方ガイド」
- 「生産ライン改善事例集」
これにより、潜在顧客をリード(見込み顧客)として管理し、将来的な案件化を狙えます。
6. MAツールを活用し放置リストや休眠顧客リストの活用を行う
製造業では、過去に取引のあった休眠顧客を再発掘することが、コスト効率の良いマーケティング施策となります。この段階では、MA(マーケティングオートメーション)ツールを活用して、顧客リストにメルマガなどを送付する手法がおすすめです。
MAツールは、ただメールを一斉送信するだけではなく、メールに対する顧客の反応を記録・分析できるため、営業活動を大幅に楽にしてくれます。
7. Webサイトのコンテンツを追加
最後に、WEBサイトのコンテンツを充実させ、継続的な成果を得られる仕組みを作ります。
特に製造業では、技術的な情報や専門性を活かしたコンテンツが重要です。
追加すべきコンテンツ例
- ホワイトペーパーや技術資料
購買担当者が意思決定を進める際、具体的な資料が重要になります。以下のような資料を用意しましょう。- 「加工精度の向上事例集」
- 「エネルギー削減のための設備選びのポイント」
- 専門的なブログ記事
例えば、「最新の加工技術トレンド」や「業界別の課題解決策」をテーマに記事を投稿することで、検索流入を増加させます。
これまでのステップを実施し、流入が増えているならホワイトペーパーや技術資料の掲載を増やす、まだ流入が少なければ専門的なブログ記事を増やすなどがおすすめです。
まとめ|製造業こそWEBマーケティングを!
製造業において、WEBマーケティングは単なるデジタル施策ではなく、顧客との新たな接点を生み出し、営業活動を効率化するための重要なツールです。
この記事では、WEBマーケティングの必要性から、具体的な導入ステップまでを7つの段階に分けてご紹介しました。
特に製造業においては、以下の点が重要なポイントです。
- 購買担当者の行動変化に対応し、情報提供の場をWEBにシフトする。
- 専門性の高い製品情報や事例をWEBサイトで効果的に見せる工夫をする。
- SEOやリスティング広告で見込み顧客を集める一方、MAツールで効率的に顧客育成を行う。
これらの取り組みを段階的に進めることで、短期的な成果だけでなく、中長期的な営業基盤を強化することができます!